PTA全国ネットワークに異変 すでに4市の組織が離脱 [朝日新聞2015年4月26日10時04分]
「日本PTA全国協議会」(日P)を頂点としたPTA組織の一部で異変が起きている。この5年で少なくとも4市のPTA連合組織が上部団体から離脱した。会費を納めて全国組織にいることより、独自の活動をめざす保護者の意識の広がりが背景にある。
加盟は任意だが、高い組織率を誇る全国ネットワークから離脱した4市は、岡山、倉敷(岡山県)、徳島、熊本。いずれも県内で最大級のPTA会員を持つ都市で、県組織に対する影響は小さくない。離脱組の一つ、「徳島市・名東郡PTA連合会」(徳東P連)にこの3月、徳島県PTA連合会(県P連)から一通の文書が届いた。「再加入について、前向きにご検討ください」とあった。
徳東P連が県P連から脱退を決めたのは2011年。県P連は子どものけがなどを補償する団体保険の案内を保護者に出し、保険会社から手数料をもらっていた。その金額や使途を公表しなかったため、徳東P連は「いい加減な上部団体に所属していたら、保護者にそっぽを向かれてしまう」として脱退した。
一方の県P連は「県内のPTAがまとまらないと、県教委に意見しにくくなる」などとして、復帰を促しているが、徳東P連の陽地政宏会長は「方向性は決まっていない」。
全国にある県P連の役割の一つは、加盟する市町村P連から聞き取り、県レベルの要望としてまとめ、県に伝えること。そんな中、倉敷市P連が13年に離脱したのは、県P連による組織運営への不満からだった。
倉敷市P連によると、離脱後は県P連に払う会費や全国大会の参加費など計160万円が浮いたので、市P連独自の活動に充てたという。中村勇会長は「いっそう活動を吟味するようになった」と話す。
すでに、県P連から離脱し、独立して活動している岡山市P連の赤木康二会長は「小回りのきく組織になった」と話す。熊本市PTA協議会も、市教委と連携してプール開放のマニュアルをつくるなど、独自の活動を進めている。
離脱したある市P連の役員は「長年のしがらみもあるので難しかった」と話す。離脱したことを知った他の市P連関係者から、離脱の手続きなどの問い合わせが相次いだという。
一方、13年に離脱した新潟市P連は今春、日Pに復帰した。「負担金や大会への動員もある。メリットを会員に説明できるのか」という復帰に対する慎重論も出たが、「陳情のスケールメリットを考えた」(大宮一真会長)という。
また、日Pは、東日本大震災などの災害時に全国のPTAに呼びかけて募金活動をしたり、国の審議会などで発言したりもしている。上部組織から離脱する団体が出ていることについて、日Pの寺本充専務理事は「個別の県Pや市Pの活動内容を指導する立場にはないが、子どもたちのことを思えば、全国や都道府県の組織で一緒に活動する方が有益なのではないでしょうか」と話す。(田中聡子、堀内京子)
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《PTAに詳しい政策研究大学院大学の今野雅裕教授(生涯学習論)の話》 PTAの上部団体は、自治体から支出される補助金の受け皿でもあり、透明性が求められる。それなのに上部団体がいい加減に運営していたら、離反されても仕方がない。半ば自動的に加盟会費が納められる仕組みも問題かもしれない。PTAがこれまで培ってきた大切な信頼が傷つかないようにしてもらいたい。
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〈日本PTA全国協議会〉 都道府県と一部の政令指定市の計62団体が加盟する。学校単位のPTAに加盟している会員数は約850万人とされる。戦後、連合国軍総司令部(GHQ)の奨励で小中学校の9割にPTAが組織され、1952年に全国組織ができた。加盟率が9割を超える都道府県組織が多い一方、東京都の公立小の場合、加盟率は2011年現在で17%にとどまっている。