じゃんけん、くじ引きで役員選出は“黄信号” 変化求められるPTA運営[THE PAGE 2014.07.07]
ここ数年、PTAの運営方法についての改善点が論じられることが増えています。PTAとは「Parent-Teacher Association」の略であり、本来、保護者と学校、さらに地域が連携し、学び合うことで子どもの成長を見守り助けるという主旨の組織です。しかし、その運営方法に非効率な部分があったり、一部の保護者が参加しづらいものであったりするといったことがたびたび指摘されています。Yahoo!知恵袋で「PTA」を検索してみると、「しつこい勧誘に困っている」「抜けたいのに抜けられない」「役員選出の公平性とは?」などの内容が見つかることからも、PTAについて悩む保護者が多いことがわかります。
PTAとは、保護者にとって頭の痛い存在なのでしょうか。そうであるならば、改善するためにはどうしたらいいのでしょうか。5月に刊行された『PTAをけっこうラクにたのしくする本』(太郎次郎社エディタス)の著者、大塚玲子さんに話を聞きました。
うまく機能しているかのチェックポイントは
自分が関わるPTAが組織としてうまく機能しているかどうかのチェックポイントについて、大塚さんはこういいます。
「大事なことは活動に参加すること自体を辛いと感じている人がいないかどうか。PTAはそもそも任意加入が原則ですが、とはいっても参加しないわけにはいかない状況だったり、辛いと言えない状況の人も多いと思います。チェックポイントはいくつかありますが、たとえば、役員を選出するときにじゃんけんやくじ引きで決めている場合は黄色信号だと思います」
役員をじゃんけんやくじ引きで決めているという状況からは、「PTA役員をやりたい人がいない」「押しつけ合いになっている」ということが伺えます。それでは、押しつけ合いにならないPTAにするためには、どんなことが必要なのでしょうか。
押し付け合いにならないPTAになるためには
(1)活動内容を明確にする
まず大切なのは、PTAが何をする組織なのか、参加するとどのぐらいの仕事がどんなときにあるのかを明確に提示すること。「PTAは大変」「拘束時間が長い」といった噂が先行し、実態がわからないまま敬遠されているというケースもあるようです。
「入学時にPTAの説明会は必ず開くべきだと思います。ただ、全ての保護者が参加できる時間帯に説明会を設定するということはなかなか難しいですよね。現在は多くの人がインターネットを利用しているので、ウェブ上で説明を行うのも有効ではないでしょうか」(大塚さん)
(2)一部の都合に合わせない
もともと戦後にスタートしたPTA。会社員の夫と専業主婦という、戦後の日本で最も多かった家庭のスタイルを「基本」として運営方法が確立されている場合も少なくありません。現在は共働き家庭が増えたほか、シングルファザー、シングルマザー家庭の他、外国人家庭も増えました。また、保護者の働き方もパートタイムや派遣、正社員、自営業など多様化しています。『PTAをけっこうラクにたのしくする本』の中では、都内の小学校で保護者に「PTA活動を行うのに都合が悪い時間帯」についてアンケートをしたところ、答えがみごとにバラバラになったことが紹介されています。
「平日の午後がいい人もいれば、休日の午前中がいい人もいます。全ての人が都合の良い時間帯はないということを理解した上で、『強制しない』ということも必要です」(大塚さん)
(3)人間関係を目的にしない
「保護者同士でコミュニケーションを取ることは大切ですが、家庭の事情でPTAの食事会に参加できなかったり、活動後のおしゃべりまでおつきあいできないという場合もあります。『人付き合いそのもの』を目的にしてしまうと、みんなが辛くなりがちなので、『あくまで子どものために活動している』という前提を、頭に置いておきましょう」(大塚さん)
たとえば会社の場合、飲み会などのコミュニケーションはあくまで業務を円滑にするためであり、人間関係を構築することが第一の目的ではありません。PTAも、子どものより良い成長を見守るという目的を共有する組織であるという認識が広まれば、さらに活動しやすくなるかもしれません。
男性の育児参加も徐々に増えはじめ、今後はPTA活動に参加する男性も増えると考えられます。多くの視点、意見を取り入れるために、より参加しやすいPTA、参加したくなるようなPTAへ運営を改革していくことが必要でしょう。
(小川たまか/プレスラボ)