伏魔殿PTA「仕事の削減」で不満の声?[AERA 2015年5月4日―11日合併号]
(更新 2015/5/ 4 11:30)
業務を共有しよう!共働きも専業主婦もできるときにやり、他の人の事情を尊重する。ITを活用し、一人ひとりの負担を減らそう……という声も(撮影/写真部・植田真紗美)
業務を共有しよう!
共働きも専業主婦もできるときにやり、他の人の事情を尊重する。ITを活用し、一人ひとりの負担を減らそう……という声も(撮影/写真部・植田真紗美)
強制的に役員にさせられ、仕事を休んで無償奉仕。伏魔殿のようなPTAは敬遠される存在だ。そんなPTAを変えようと奔走する人もいるが、頓挫する例は少なくない。一方で、参加しやすい仕組みを取り入れ、改革に成功している学校もある。
会議は平日昼間。仕事があってもPTAを優先して当然。この「鉄板ルール」が、働く親がPTAを敬遠する大きな要因だ。
東京都江戸川区で料理教室を主宰する棚瀬尚子さん(44)は5年前、公立小のPTA広報委員を担当し、くじ引きで委員長を任された。仕事があって、平日の会議には参加しづらい。PTAの活動内容を全面的に見直し、かかる時間を計算したうえで、委員に細かく割り振った。
初めての打ち合わせで、「1学期の間、一人2時間だけ手伝ってください。過去にとらわれず仕事を削減します」と訴えた。委員の負担が大幅に減り、歓迎されると思いきや、上がったのは不満の声だった。
「PTA室は母親たちのコミュニケーションの場でもありました。学校に出向くことを楽しみにしていた人たちが、仕事の削減によって存在意義を否定されたと感じたようです」
結局、改革は1年で頓挫した。
横浜市のある公立小でもPTAの会議は平日の午前中。IT企業勤務の女性(42)は昨年度、学年委員を務めたため、学校行事も含めると月3回、半休を取らなければならなかった。
地域柄、共働き世帯は少なく、7割が専業主婦。役員は「責任をもって職務をまっとうする」ために、夫と交代もできない。そもそも男性は会長だけの「女の園」だ。職場の上司に「今年は迷惑をかけます」と頭を下げ、有休を節約するため自分は発熱しても出社した。
働いている人は平日昼に都合をつけにくく、専業主婦は家族が自宅にいる夜間や週末は出かけづらいといった事情もあり、誰もが納得する会議時間の設定は難しい。
品川区立小中一貫校の日野学園のPTAは、都合のつく日に参加できる仕組みだ。平日昼でも週末でも可能で、難しければ「すきま時間」に単発の仕事を手伝うなど、関わり方を自由に選べる。「資料は作ったので印刷しておいてください」「時間がなかったので各クラスに配る準備はお願いします」など、メールやLINEで業務を共有し、引き継ぐことができる。
顔を合わせる会議は月2回の土曜登校日に設定し、「子どもと一緒に登校して一緒に帰宅する」というコンセプトで家族の時間を妨げないようにしている。昨年度まで3年間PTA会長を務めた鴇田(ときた)宣一さん(50)は外資系企業に勤めるサラリーマン。役員の3分の2が仕事とPTAを両立しているという。
※AERA 2015年5月4日―11日合併号より抜粋