「本来は先生の仕事では」 PTA活動、読者の声を紹介
[朝日新聞2015年5月10日05時24分]
PTAについてどう思いますか?
朝日新聞デジタルで展開したアンケートには、熱のこもったコメントが全国からたくさん寄せられました。多くのメールも届きました。同じPTA会員でも男性と女性の間に不平等があるのでは? 先生や学校との関係、このままでいいの? 会費の集め方と使い方、おかしくない? PTA活動をめぐる読者の声を紹介します。
PTAは必要?不要? アンケート実施中
●男同士の変化、楽しめた
会長でした。自動車関連に勤める男性が多く、土日休みや、有休の取得が容易で本部の半数は男性。初めは仕事や趣味の話で盛り上がりましたが、今では、通学路の危険な箇所に保護者をどう展開しようか、卒業式の服装が華美になりすぎているなど、学校の話題が中心に。家庭でも子供や妻と会話が増えたと喜んでいます。(愛知県・30代男性)
●やる気のある男性お断り
やる気のある男性が入ってくると大変なことになるので、入ってきて欲しくありません。いいことをしているという気持ちは認めますが、そのために母親たちが犠牲にしなければならないことが見えていない。帰ったらご飯のできている人と、帰ってご飯を作る人との差である、と思います。(東京都・50代女性)
●有給休暇の8割はPTAに
企業に勤めながらPTA会長を2年間務めた。学校の主な行事と上部団体への参加だけの条件で引き受けたが、年間20日の有給休暇の8割を使った。(埼玉県・40代男性)
●駆け上がる男性役員
女性は下働き、男性は実務経験なしに一気に副会長、会長など要職に。会長経験者が子ども会育成協議会や地域自治会連合会の役職へと登っていく。(大阪府・60代男性)
●シングルファーザーは許される
役員決めのくじ引き。父子家庭は「仕方ないよね」と免除されるが、母子家庭は免除されない。夫を亡くしたばかりで「収入の安定度や有休がないなど、こちらが免除されるべきではないか」と泣きそうになった。やってみれば、委員から私的な面も支援を受け精神的にすごく助けられた。(東京都・40代女性)
●「女の文化」を学ぶべきだ
昨年、初めて役員を経験しました。PTAにあるのは「女の文化」。情報の入手の仕方、合意形成の仕方、ネットワークのつくり方など、男とは全然違っていてとても新鮮でした。時間がかかって、一見、無駄が多いようにも見えますが、あのコミュニケーション能力はすごい。ほとんどの組織が「男の文化」に支配されている日本社会にあって、「女の文化」が息づいているPTAの存在価値は小さくないと思います。(神奈川県・50代男性)
●PTA会長は偉いのか?
勤務先で男性の同僚や女性の先輩の何人かがPTA会長経験者です。経験者は任期中、必ずPTA会長の業務内容を同僚に自慢します。保護者は平等だと私は思いますが、PTA会長がそんなに偉いのか? 勘違いしている感をうけます。(長野県・40代女性)
●今どき、資料手渡し
会員間も学校とのやりとりも、電話や学校訪問での手渡し。メールもクラウドサービスも通用しない。出張先で作った広報資料も、印字しカメラで撮影してLINEで仲間に送り、委員会に出すはめに。現役会社員が役員を出来る環境ではありません。(茨城県・40代男性)
●お菓子持ち込み、世間話ばかり
フルタイムで働く2児の母。皆がお菓子を持ち込み世間話の方が長いPTAのために、午前2時まで残業して休んだ分をカバーしなければならず、男社会の職場で白い目で見られた。(愛知県・50代女性)
●黒か紺のスーツ着用が義務
ウチの小学校の場合、父親は会長のみ、他の役員は母親と決まっている。総会などに出席の時、ブラックか紺のスーツを着用する義務がある。(東京都・40代女性)
●小間使いじゃない!
学校行事の度に運営役員が駆り出され、お茶くみや弁当配りをさせられることに納得がいきません。卒業式の来賓へのお茶出し、終了後の食事接待の準備・片づけ、教員の祝賀会の準備、先生方との食事。必要でしょうか? 先生は一切手伝いません。(神奈川県・40代女性)
●「教員に負担かけるな」
昨年度、広報委員長でした。委員全員が働く母親。時間がなく、広報誌作成業務をこなすのは困難でした。そこで広報担当の教員が6人もいるのを見つけ学校に協力を求めましたが「教員は忙しいので出来ない。教員に負担をかけないで欲しい」という信じられない返答。(埼玉県・40代女性)
●親の自己表現の場
PTA会費は、学校の予算がつかない物を購入する際の学校の財源で、本部は仕事を持たない親の自己表現の場となっている。(宮城県・40代女性)
●別用途に予算を使っている
会費の使われ方がずさんだ。会計報告書は形だけで、帳じり合わせだ。学校の予算項目とダブっているところがあり、余分なお金を経費としてストックし、別の使い道に使う。(群馬県・50代男性)
●3分の2が司書の給与とは
全PTA会費約300万円のうち約200万円が図書館運営費、つまり司書の給与。本来、行政が運営費用を全額負担すべきだ。寄付であるPTA会費を当て込んだ教育行政はおかしい。(長野県・40代男性)
●虫のよい「タダ働き」
活動は、学校都合によるものが多いお金の出納、学校職員の人員不足を補うためのお手伝いが非常に多い。「暇であろう主婦をタダで学校のために働かせる」という虫のよさが感じられる。市は予算がないからと必要な修繕費も出さず、学校は後援会費を当てにする。防犯用の玄関のオートロックまでPTAからの寄贈だ。(青森県・40代女性)
●人材、財源を補う存在
元中学校教員です。多くの学校で、PTA会員は体育祭などのお手伝い要員や、見守りなどのボランティアと化している。本来、職員で賄うべきもので、人員や財源不足を補っている。教職員と保護者、保護者同士の交流を深め、相互の連携を図る活動にしぼるべきではないか。(東京都・50代男性)
●上納金確保が腕の見せどころ
教員の立場から見ると、校長・教頭は、PTA(保護者)をうまくコントロールして、学校に干渉しない無害な活動(ママゴト・組織ごっこ)で自己満足させながら、上位団体に上納する資金だけはきっちり確保する能力が問われます。(福井県・30代男性)
●会費の運用で人件費を捻出
かつて市PTA協議会の理事を務めた。会費徴収はほぼ強制で、市P協は会費の一部で子供の安全を守ると称して保険事業を運用し、収益から市P協と市内10の区PTA連合会事務局で退職校長を事務局長として雇った人件費として毎年2千万円以上支出していた。(北海道・50代男性)
■体験ふまえ1400の意見
朝日新聞デジタルのフォーラムページで、7日まで実施した「どうする?PTA」のアンケートに、2104の回答がありました。アンケートの結果はグラフの通りです。
全都道府県から、実際の体験や意見の書き込みが1400ありました。働く母親が増えたのに平日中心の活動が依然多い、男女の役割の差、「強制加入」、くじ引きによる役員決め、会費の不明瞭な使われ方などに多くの意見が寄せられました。
回答の多くは「PTA役員・元役員」からでしたが、一部の方からは「役員の範囲をはっきり定義すべきだ」という意見がありました。また、PTAの印象を選択する項目で「面倒くさい」と「負担が大きい」は別にすべきではという指摘もありました。
■議論のきっかけに
「やってよかった。PTA経験は私の人生の宝物」「うんざりです。全部廃止してほしい」
お互いに交わりようもない意見の数々が隣り合って並ぶコメント欄は、PTAに対するスタンスについて理解し合うことの難しさを象徴しています。
3年前にPTAを取材し始めた頃と比べ、「PTAは入退会自由」の原則を知る人は増えたように思います。しかし、「強制されるべきではないのに」「文句を言うなら退会すればいい」という新たな摩擦を生んでいるようです。
今回、多くのPTA役員・元役員も、動員の悩みや会費の上納、地域、政治との距離感などに関して経験者ならではのコメントを寄せてくれました。「専業主婦VS.働く母親」「参加する母親VS.無関心な父親」との見方は、一つの構図に過ぎないと気づかされます。
1400通のコメントを共有することで、少しでも議論が前に進まないでしょうか。。