PTAと付き合う方法は
毎日新聞2016年3月20日 東京朝刊

父親も参加 地域活動へ


 子どものPTAや保護者会のことを考えると憂鬱になります。つい面倒くさいと思ってしまいますが、うまく付き合う方法はあるのでしょうか。

 PTAが任意団体で入退会自由ということは、意外と知られていません。多くの学校では「子ども1人につき役員1回」などと半強制的な当番制を敷いています。その一方、希望者によるボランティア制を導入したり、地域の人にも加わってもらったりと、改革に取り組むところも出てきているようです。

 PTAに関する記事を多く手掛けるフリーライターの大塚玲子さんは、「PTAが嫌われる主な理由は二つ。具体的な活動内容が見えないことと、活動を押し付けられること」と話します。

 役員を決めるとき「広報」や「文化」などの委員名は紹介されても、実際にどんな仕事をして、どの曜日や時間帯にどれぐらいの頻度で集まっているのか、といった詳細までは説明されません。「現実を知らなければ尻込みするのも仕方ない。自分から質問してよいでしょう。前任者が『正直に説明すれば、誰もやりたがらない』と考えるような作業なら、そもそも見直すべきです」と指摘します。

 例えば、その一つが「ベルマーク」運動。集計作業に伴う保護者の負担や時間的制約が大きく、近年、やめるPTAも少なくないといいます。「周りの親とおしゃべりしながら作業するのが好きな人もいます。丁寧に話し合い、残すところは残し、変えられるところは変えていけば納得した上で立候補してくれる人も現れるでしょう。押し付けられると面白くないですが、意見が採用されれば楽しく感じるものです」。ただ不満を訴えるだけではなく、代替案を示すことが大切と言います。

 母親だけが、もやもやした思いを抱えることもあります。集まる時間が平日昼間の場合、仕事を休んで参加しなければならないこともあり「女性の労働が軽視されているのでは。男性は会長でもない限り、そこまでの負担を期待されませんよね」と大塚さん。集まる回数を減らすために、メーリングリストでの意見交換はもちろん、インターネットを使ったテレビ会議など、方法はいろいろあると助言します。

 「PTAは可能性を秘めた場所。子どもを通して人間関係を広げ、地域とつながるのは有意義ですよ」。こう話すのは、PTAを地域活動へと発展させた実績を持つ岸裕司さんです。

 1980年代に子どもの友達の父親を誘い込み、スポーツやパソコン、物づくりなどを教える活動を学校内で始めました。「仕事を通して専門性を持っている人が多い。その専門性をPTA活動に生かしてもらおうと、意図的に父親の出番を作りました。PTAは母親がやるものと考えている人は多いですから」

 岸さんは3人の子どもが卒業した後も活動に携わりました。「子どもは大きくなると親と遊んでくれない。でも学校に顔を出していれば、他人の子もみんなかわいくなってくる。『地域親』みたいな存在です」。地域住民に門戸を広げることも、PTAの活性化につながるといいます。

 でも、岸さんのようなリーダーがいなければ、実際のところ難しいのでは。「確かに向き、不向きはあります。でも、最初は数人でも楽しそうに活動していれば、自然と人が集まります。当番制にするからPTAが苦役になってしまう。悪循環です」

 一方で、岸さんは「面倒なことを引き受けて学ぶのも、親として成長する機会。逃げずに向き合ってください」とアドバイスします。【鈴木敦子】


 ◆今回のアドバイザーは

大塚玲子氏(44)

 フリーライター、編集者。著書に「PTAをけっこうラクにたのしくする本」

岸裕司氏(63)

 千葉県で学校と地域が連携する「秋津コミュニティ」を設立、現在は顧問。